夏の出来事 その3

樽ばやし参加が終わって休む暇なく、今度は、まごころ学園・寮の年中行事では一番の大きな行事「サマーフェスタ2010」の8月8日開催に向けての準備が始まります。前任の柳原前園長の「参加する利用者ひとりひとりに、より楽しんでいただけるような行事にしよう。」との思いを引き継ぎ、昨年度以上の計画を5月から準備を進めてきました。会場準備も例年より3日早く進めました。連日、猛暑日による熱中症の事故が報道されています。ギラギラ太陽が頭をクラクラさせます。グラウンドやら駐車場やらの整備に1時間も作業をすると、Tシャツから汗が滴り落ちてきます。「雨が降るよりいいよね」なんて呑気なことを言っている職員もいます。それでも、連日の猛暑日の中で頑張ったかいもあり、開催当日の午前中には殆ど会場が出来上がりました。

 

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開催時間は午後5時、家族の方たちが集まる午後3時までには十分すぎる準備時間です。青少年ボランティアの中高生やまごころヘルプのボランティアの方たちも朝から準備に加勢してくれています。

当日も最高気温34度の予想。降水確率0%。一部地域によっては大気が不安定になり、雷雨ありとの予報。朝から、雲ひとつない、まさに猛暑日に相応しい空。内心ちょっとくらいお湿りが欲しいぐらいの天候です。

午後は、テントと提灯の最終セッティング。会場を殆ど覆ったテントは、消防署と市役所からも借り受けて総数15張のテント。参加予想の300人程度なら、一時的な雨くらいは凌げそうです。それぞれのテントの周りには、提灯をとりつけ、一大ビアガーデンの出現かと思いました。

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殆ど完成の午後3時、遠雷が遠くで鳴っていました。少しずつ雷の音が近づき、ひと雨来るのかなと少し心配になりましたが、これまでもお湿り程度の雨雲が素通りしていくばかりだったので、あまり気にも留めず準備を進めていました。
そうこうしているうちに、まごころの上には黒々とした黒雲が垂れこめ、雨が当たり始め、それと共に風も出てきました。みるみるうちに雨足が強まり、強風が吹き始めてきました。その時です。強風が吹き荒れ、空から製氷器から氷をばらまいたような直径2~3センチの雹がバラバラと叩きつけるように降り落ちてきました。
こんなことってあるの?! 猛暑日の悪夢のような出来事です。

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職員は準備し終えた会場のテントやらテーブルを必死の思いで支えています。でもこれ以上は危険です。待機の指示を出した途端、テントは反転し、揃えたてのテーブルや椅子も薙ぎ倒されていきます。ゲリラ豪雨様のお通りです。15分ほど経って、ゲリラ豪雨は去って行きました。
お客様を迎えるばかりの会場は、もう散々たる状況でした。殆どのテントの脚は無残に折れ曲がり、テーブルや椅子は横倒しになり、飾り付けた提灯や吹き流しは飛び散らされて、一大ビアガーデンは見る影もありません。おまけに、音響機器はびしょ濡れになり使用不可能。

どの職員の顔も意気消沈した表情になり、どこからとなく「もう駄目だね」「サマーフェスタは中止だね」と声が聞こえます。これだけ職員全員で準備を頑張ってきたのに残念で仕方ありません。

 

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ゲリラ豪雨が去って15分の経たないうちに、空は何もなかったように抜けるような青空が広がっています。しょげているばかりではいられません。中止にするにしても、多くの屋台店の業者やイベントボランティアに中止を告げなければなりません。業者の方は当日の参加人数に合わせてたくさんの材料を用意されていたはずです。既に遠方から向かっておられる方もいます。楽しみにしている利用者の皆さんはすでに法被に着替えています。決断の時です。誰よりもサマーフェスタの成功を願っていた企画担当の職員を園長室に集めました。誰もが中止の指示とその後の対処と思って入室してきたようです。
表情も曇りがちです。仕方ないと言え、どの顔も諦め切れない、納得出来ないといった様子です。消化不良そのものです。
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それぞれの職員から意見を求めました。「実施したいけど、このような状態では中止はやむを得ないと思います。」「仕方ないけど中止だと思います。」「なんとかやれればと思うのですが…。」と元気なく答える職員同様に、頭の中では、会場の無残な姿と楽しみにしていた子どもたちや利用者の方たちの顔がぐるぐると回っています。しばらく沈黙が続きます。
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「本当にできないだろうか?」中止にしてもその後の対処は、実施することと同じくらい労力が必要です。ましてや、やったとやらないでは、その労力に対する達成感や満足感は何十倍も違ってきます。その時です、小さな声で「なんとかやりたいです。」という声が聞こえました。その声が少しずつ大きくなって「なんとかできると思います。」に変わり、不安はありましたが、なんとかできそうだぞと云った小さな自信が職員の間に湧いてきました。取り敢えず被害状況を調べてもう一度15分後に集まろう。小規模で良いから、出来ることをやろうと云うことになり、職員の前向きな気持ちがひとつになりました。少し元気が出てきました。開催時刻まで1時間30分を切りました。
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被害状況を調べた結果、被害が大きく思えた会場のテントを撤去すれば何とかお客様を受け入れることができそうです。使用不可能な音響機器は、急遽馴染みの電気屋さんが貸してくださることになって、これで何とか形になります。飾り付けや照明機器は残念ですがあきらめるしかありません。そうと決まれば、破損したテントやテーブルの撤去です。幸いにも業者の屋台店はその後のセッティングだったため、職員やボランティアの方に交じって業者の方までが撤去作業を手伝ってくださいました。

開催時間の午後5時になりました。お客様が次々に来園されてきました。皆さんも事情が分かってか、「大変だったですね。」と言いながら、会場作りを手伝ってくださいます。あとひと踏ん張りです。

 

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午後5時30分。30分遅れでしたが、会場が整いオープニングを迎えました。葛巻葡萄のみなさんの賑やかな踊りがこれまでの惨事を吹き飛ばしてくれるようです。アルビレックスチアリーダーのみなさんの「元気!」「勇気!」「笑顔!」の掛け声に合わせた演技に見惚れているうちに、何もなかったようなそんな錯覚をしてしまいそうです。屋台店も大賑わいです。子どもたちも利用者の方たちも思い思いに楽しんでいます。あちらこちらに笑い声がいっぱいです。

酒販組合の屋台店の生ビールも売れ行き好調です。地域支援係の屋台店では松村主任が焼くタコ焼きも大好評で飛ぶように売れています。給食の業務委託の日清医療食品の皆さんも焼きそばに、唐揚げにとてんてこ舞いです。懐かしいポップコーンのお店、いくつもの自家製アイスを揃えたお店、焼き鳥のお店では匂いに誘われて長い列ができています。いくつもの屋台店に囲まれて、テントの屋根のなくなった会場は、いつのまにかに星空を見ながらの野外レストランに変身です。

子どもの遊び場コーナーでは、新潟中央短期大学のボランティアの皆さんが一生懸命に作られたつりぼりゲームの魚たちがゲリラ豪雨と共に逃げ出してしまい、一時は中止になってしまったけれど何とか修復ができ、くじ引きのコーナーとともに子どもたちがたくさん集まっています。隣の体育館は、大きなトランポリンや遊具を設置した屋内遊技場です。

数時間前の惨状が嘘のように、例年と変わらない賑やかなサマーフェスタがあちらこちらにありました。

 

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サマーフェスタ2010もいよいよ終盤です。新潟市からわざわざ私たちのサマーフェスタのために出演を快諾していただいたお笑い集団NAMARAの脳性マヒブラザーズの周佐さんとDAIGOさん、会場設営が不十分で移動などにお困りの点もあったかと思いますが、楽しいお笑いコントをありがとうございました。また、一緒に来られた見附市出身のお笑いコンビのカエルとミジンコさんも楽しいコントをありがとうございました。まだ高校生なんですね。これからもプロ目指して頑張ってください。

最後の演目は、ネーブルダンスの皆さんと利用者の皆さんが輪になって一緒にダンスや踊りを楽しみフィナーレを迎えることになりました。踊りを踊る利用者さんや職員の笑顔を見て、隣にいた企画担当の職員に「やってよかったね。」と話すと、笑顔で頷いてくれました。いよいよフィナーレのまごころ大スターマインの打ち上げです。55発の花火が夜空に打ち上がるたびに、長かった1日が思い出されて、ドーンと響く花火の音とに併せて、ジーンと胸に込み上げてくるものがありました。たくさんの支えがあって、強い強い絆を実感した1日でもありました。皆さん本当にありがとうございました。

「元気!」「勇気!」「笑顔!」をたくさんいただきました。

 

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お客様が帰られ、会場の照明が落とされ、園長室に戻りちょっぴり「ほっ」とした時間、改めて、1日のことが鮮明に甦ってきます。「不幸中の幸い」とは良く云ったものです。もしかして、あのゲリラ豪雨が、2時間後だったら、1時間後だったらと考えてしまいます。2時間後だったら、テントの被害どころではありません、300人も集まっています、移動の困難な方もいます。調理もしていました。もっと被害が大きかったに違いありません。1時間後だったら、もう準備の時間はありません。中止せざるを得なかったと思います。利用者の方も職員もけがや大きな被害も無く、ましてや、開催まで辿り着いて例年同様の楽しいサマーフェスタを開催できたのですから、これは不幸中の幸い以外なにものでもありません。
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「人間万事塞翁が馬」とは良く云ったものです。職員の落ち込んだ気持ちに勇気と元気と笑顔の力を貸してくださったのは、たくさんのボランティアの方々や屋台店の協力業者の方々、利用者の家族の方々、そして、当日のお客様でした。そのたくさんの方々との「絆」の大切さを改めて心に刻み込むことができました。
今年のサマーフェスタに名前を付けるとすれば「お陰様」と「絆」のサマーフェスタだったと思います。
なにより、職員一人ひとりが、お互いを信頼し合い、あきらめずに開催に向かって精一杯頑張ったことも、これからのまごころ学園・寮にとっては大きな収穫だったと思います。

サマーフェスタにお出でいただいた皆さん、本当にありがとうございました。そして、お疲れ様でした。

最後に、早くから準備を始めアクシデントにも挫けずに中心になって頑張っていただいた、企画担当の金安主任、山崎主任、高橋主任、皆川指導員、小栁指導員、大変お疲れ様でした。

担当係を脇から支えた職員の皆さん、大変お疲れ様でした。

ありがとうございました。

 

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暑かった夏も終わり、明日からは、暦の上では、秋です。今年の残暑は暫く続くと天気予報が伝えています。私の夏の宿題の「施設長だより」もようやく書き終えることができました。もっと早くからやればよいのにと声が聞こえてきます。溜まりに溜まった日記を一気に書いてしまったので、長文になってしまい読みづらいかと思いますがご了承願いたいと思います。子どもの頃からの性格は変わらないものです。
「 宿題の 積もりし時を 秋迎え 」

平成22年8月31日    園 長  金 安 良 則

 

2010.09.02