こころの力 ことばの力

 

昨年末から、タイガーマスクの主人公「伊達直人」に名を借りた、心暖まる善意の輪がちょっとしたブームになっています。「タイガーマスク」に胸躍らせていた世代には、懐かしさも加わって真冬日の続く凍てつく身には、心を暖めてくれる、そんな出来事です。
「伊達直人」が各地に広がるにつれ、マスコミは挙って、精神科医や社会心理学者まで登場させて、「タイガーマスク現象」の社会背景等をひも解こうと、連日のニュースになっています。
一時的な流行の現象に便乗したものであったとしても、「何か人の役に立ちたい」といった暖かな気持は、素直に喜びたいと思います。
 
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最近、よく耳にする報道といえば、「無縁社会」だの「孤独死」だの、「孤立感」、「疎外感」といった、人と人のつながりが希薄になってきた現代の社会背景を危惧する内容のものがほとんどです。このような冷え冷えした人間関係だけが浮き彫りになる現代社会にあっては、一時的な流行であれ、「まだまだ世の中捨てたものではない。」とコメンテーターが言っていたけれど、その思いに同感です。
ノスタルジーに浸るわけではありませんが、「まだまだ世の中捨てたものではない。」と比較された、40年前の「タイガーマスク」がブラウン管で活躍していた時代、貧しくても「希望」があったのかもしれません。生活に喘いでいたけれど、そこにはどっしりとした生活感や生活臭があったのかもしれません。だからこそ、どこでも「お陰さま」と「お互いさま」が行き来していたのかもしれません。
今、自由さや物や便利さも溢れていますが、それぞれの「思い」は、「願い」は、「望み」はどうなんだろうか、それぞれの自分らしい「暮らし方」は、「生き方」は、「感じ方」はどうなんだろうか、何か押し殺しているように思えてなりません。現代の伊達直人さんもその一人なのかもしれません。だからこそ、「伊達直人」の名を借りて「今を生きている」実感と充実感を味わいたかったのかもしれません。
是非今度は、伊達直人さん自身の手と口を介してこころを伝えていただければ嬉しいと思います。街のあちこちに伊達直人さんがたくさんいて、「何かお手伝いすることはありますか。」と手を添えたり、「元気にやっていますか。」とことばを添えたり、といろいろな伊達直人が活躍できる、そんな「タイガーマスク現象」が流行すればありがたいと思うのは私だけでしょうか。
 
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 タイガーマスクの伊達直人ではありませんが、私どもの施設にも歳末にたくさんの心暖まる善意を寄せていただきました。心から感謝申し上げます。
 地域のショッピングセンター「株式会社スーパーマルイ」の清水社長。昭和58年に見附市の企業誘致第1号として電子部品を製造されている「シンコ―電気」の中川社長。いずれも20年、30年と続けて私どもの施設へ思いを寄せて、暖かな気持をお持ちいただいています。
 スーパーマルイ様からは、お買い物に立ち寄られた方からのたくさんの小さな善意に職員の方も加わりお持ちいただきました。
 シンコ―電気様からは、企業状況の大変厳しい時であっても、30年近くにわたり、毎年暖かな気持をお持ちいただいております。
 また、クリスマスに近い頃、一昨年開店された「パン・ド・ネーブル」の山崎代表からは、まごころで生活する利用者71名の一人ひとりにクリスマスに彩られたパンケーキを、合わせて、お店で提供されるコーヒーに寄せられた募金箱からの善意を一緒にお持ちいただきました。
 私よりも年齢が一回りも若い店長さんですが、自分の思いに嘘をつかずに信念に寄り添って、お客様に喜ばれるパン作りに専念されているお話を伺い、パンが少々苦手な私もちょっと食べてみたいと思ってしまいます。
 暖かな励ましのお言葉に添えて善意を寄せていただきました皆様には、入所されている方々と職員を代表いたしまして感謝を申し上げます。ありがとうございました。
 
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 皆様からいただきました暖かなお気持ちを、入所されている方一人ひとりの目に見えるかたちで活かしたいと考えておりましたら、自称施設環境改善部長の江部次長が「まごころの外をイルミネーションで飾りたいなあ。利用者の方も家族の方もきっと喜ばれると思う。」とボソッと呟きました。
 今冬の見附市の街のあちこちでは、街路樹やアーケードなどでイルミネーションが色鮮やかに輝いています。凍てつく冬の夜に明かりがあるだけで何かほっとする思いがします。
 施設が所在する北谷南部地区は、どちらかといえば、市街地から外れた少し寂しいところですが、イルミネーションを飾られるお宅や施設が増え、今では、夜になるとイルミネーション見学をする方までおられるとのことで、ちょっとした観光スポットになりつつあります。
 そんなこともあり、「まごころ」でもクリスマスに間に合うようにイルミネーションを設置しました。真っ暗だった外
に、赤やピンク、白や黄色の電光が点滅するだけで、ほんのりと暖かさが増すように思います。年末年始に家庭に帰れない利用者にとっては少し明るい学園でお正月を迎えることができたと思います。
 
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 見附市のイルミネーションがこんなにも街を彩るようになった、そのはじめの一歩にご尽力された原さんが、先週亡くなられたとお聞きしました。原さんには、まだお勤めの頃、一度だけ利用者の方たちの作業種の受託の関係でお会いしたことがありました。退職後、自分ができることで、自分の街を明るくしたい、潤いのある街にしたいと考えられ、イルミネーションで街を元気づけたい、花を植え、街を花いっぱいにしたい、その思いで続けてこられた成果が、今いろいろなところで受け継がれています。
 「伊達直人」に名を借りた善意の輪と同様に、私たち一人ひとりの「何か自分でできることは」と自らが小さな行動を起こすことが、いずれ大きな輪になって、街を変えることだってあると、亡き原さんが思いを寄せたイルミネーションを見ながら、ふと思いました。
 物やお金でなくとも、「こころ」と「ことば」があれば、萎れそうになった人が元気になったり、仲良くなったり、ぽっと心が暖まり優しくなったりします。
今回の「タイガーマスク現象」が一時的な流行であれ、「伊達直人」が贈ってくれたプレゼント以上に、そこに添えられた「こころ」と「ことば」に誰もが共感を覚えているのではないかと思います。
 
♪・・・それだから みんなの幸せ いのるのさ。
 
    平成23年1月13日   園 長  金 安 良 則
2011.01.14